学生生活も残りわずか(の予定)の、内定者及川です。
民事執行法の試験に備えて判例をいくつも読みながら、
「あぁ、もうこんな作業もこれで最後かぁ...」

なんて。
考える暇はどこにもありませんでした。まぁ卒業かかってますしね。
もう必死!もう無理!
思えば、私の学生生活で唯一きちんとやったと言えるのは
「判例研究」だけかもしれません。
名ばかり管理職の賃金訴訟などの労働問題に関する訴訟、
国歌斉唱の義務づけに関する憲法上の争い、
土地や建物に対する差押と相殺についての訴訟など、
思えばジャンルもたいして絞らずに研究していました。
1つの判例研究につき、最低でも30は他の判例も読みました。
同様の判例を遡って調べる事と、後に出された判例をあたること。
本も1つの判例につき何十冊も読みました。
法律の本は、私が読んできたどの本よりも難しかったです。
大学一年生の時は、読み方すら分からなくて用語の意味を調べられないことも
度々ありました。
判例は本当に練られたもので、一言一句、点の打つ位置にまできちんと意味が
あるということは分かっていつつも、法律家はなんでこんなまどろっこしい文章の
書き方をするのだろうとか、裁判で読み上げるんだからもっと万人に分かりやすい
表現にしてくれよなどと思った事も多々ありました。
難しくて面倒な文章ではありますが、それでもこんなに熱心に
調べてこられたのは、わたしが何だかんだ文句を言いながらも、
判例読解が好きだったからなんだろうなぁと、今思います。
ここで、わたしが研究した中で気に入っている判例を1つ。
婚姻外の男女関係の一方的解消による不法行為の可否についての訴訟
(最判平16・11・18判時1881号83頁)です。
事件の概要を簡単に説明すれば、
一度婚約し、その後婚約を解消したものの、その後も交際を続け、
2人の子どもを儲けたX(女性)とY(男性)。
しかし、Yは自分の勤める百貨店でアルバイトをしていたAと知り合い、
交際するようになる。
そして、YはXに一方的に別れを切り出し、別の女性と結婚することを告げる。
XはYに精神的損害の賠償を求め、訴えを提起。
という感じです。
第一審から最高裁まで争った結果、Xさんは敗訴しました。
Xは自身とYとの関係を「パートナーシップ契約」と称し、
この契約の一方的な解消が不法行為にあたるとして争いました。
判例の傾向として、婚姻関係の男女だけでなく「内縁関係」が認められる男女には
ある程度の法律的保護が与えられています。
つまり、一方的に別れた場合、慰謝料が発生する可能性があるということです。
普通の交際の場合、浮気しようが一方的に別れようが、ある程度自由です。
どのような条件がそろえば「内縁関係」と言えるのか、という問題がありますが、
結論から言えばXとYの間には内縁関係は認められず、
Xはどうやらそれを承知した上で訴訟を提起したようです。
このX(女性)はある大学の教育学部で助教授として
「ジェンダー論」を教えている、バリバリのキャリアウーマンだったようです。
仕事もでき、経済的にも男性に頼らず自立していたX―「理想の女性像」として
挙げる人もいるでしょう。そんな、いわば女性として「勝ち組」のX。
自分と別れ、若い女の子と結婚するというYの裏切りは、彼女のプライドを
大きく傷つけたのではないでしょうか。
「ジェンダー論」を教えていた事もあり、法律や判例傾向にもある程度知識が
あったことが予想されます。そのため、内縁関係でなく「パートナーシップ契約」
という耳慣れない言葉を用いたように思います。
彼女は損害賠償を請求していますが、本当にお金が欲しかったのでしょうか。
経済的に自立した彼女にとって、この手の訴訟で手に入るお金はそれほど大金では
なかったはずです。
おそらく、欲しかったのは慰謝料ではありません。
失ったプライドを取り戻したかったのではないでしょうか。
元交際相手に対する「あなたが間違っているのよ!」という気持ち・主張に
ついて、裁判所にお墨付きをもらいたかったのではないでしょうか。
なんてことを、判例を読みながら想像したりします。
男女関係についてのドロドロした判例も数多くあります。
どんなものにせよ、判例にはドラマ性を感じずにはいられない私です。
これからも趣味として判例研究は続けていきたいなぁ...。
まぁ、民事執行法の単位落としたら「趣味」じゃなくなりますがね。
以上、及川でした。
及川悠理